JBSG主催の映画上映会を開催しました

11月13日(火曜日)、JBSGの催しとしては初めての映画上映会を聖心女子大学ブリット記念ホールで開催しました。私達が選んだ映画は「灯籠流し PAPER LANERNS」、40代のアメリカ人、バリー・フレシェット(Barry FRECHETTE)監督のデビュー作となるドキュメンタリー映画です。

この映画は、「1945年8月6日、広島に落とされた原子爆弾の犠牲者14万人余りの中に12名の米兵捕虜が含まれていたことは、日本でも米国でもほとんど知られていなかった。この事実を知ったアマチュア歴史家で自らも被爆者である森重昭さんは、40年以上かけて米兵の遺族をたった一人で探し当て、被爆して亡くなった米兵捕虜12名に敬意を表し、遺族との交流を通して、何が起こったのかを伝えた地道な活動」をまとめたものです。

当日は、この映画のプロデューサーを務めたピーター・グリーリ氏にお出でいただき、日米協会副会長で、私達JBSGのアドヴァイザーの久野明子氏とのトークショーも行いました。プログラムは3部構成で、上映前後にトークショー、その後には客席の皆様を交えてのQ&Aの時間を設けました。

〇上映前のトークショー

久野さんとグリーリーさんは幼馴染で、気心が分かっているため、会話は全くの自然体で、スムーズに進行し、私達が知りたかったことがよくわかりました。

「森さんの活動を、バリー・フレシェット監督がどうして知りえたのか」という疑問は、この映画に登場する被爆米兵の一人、ノーマン・ブリセットさんの親友が、バリー監督の大叔父で、その大叔父さんから森さんの活動を知り、森さんの真実を突き止める活動の軌跡を映画に残したいと思ったからだと分かりました。

また、この映画はアメリカ各地で上映され大好評を得ていることから、「戦勝国のアメリカ人、原子爆弾を落とした側のアメリカ人は、一体この映画の何処に感動しているのか」という疑問に対するグリーリーさんの答えも印象的でした。「その質問は日本で度々受けます。答えは日本の皆さんが感じていることと全く同じです」でした。私達は戦勝国、敗戦国ととかく分けて考えがちですが、この映画を観た人々の感想にはその区別は全く当てはまらないのだということが分かりました。

終戦直後の1947年から59年まで日本で過ごされたグリーリーさんと、ご近所だった久野さんが、家族ぐるみのお付き合いの中で何のこだわりもなく幼馴染として現在に至るまで親しい関係を続けていらっしゃることを考えても、戦争は敵味方を分けるけれど、人間の本質はそんな分け方を超えられることを証明しているように思います。

〇上映

映画は、森さんの奥様が淡々とインタビュアーにお茶を入れていらっしゃるシーンから始まります。森さんご夫妻が活動の動機や様子を淡々と話し、被爆米兵ノーマン・ブリセットさん、ラルフ・ニールさんの遺族、友人が静かな語り口で死者への思い、家族の思いを語り、森さんと遺族達との交流の様子をカメラは丁寧に追います。

映画は2016年5月にオバマ大統領(当時)が広島の平和記念公園を現職大統領として初めて訪問し、「核兵器のない世界」にむけたスピーチをし、森さんと固く抱擁を交わすシーンで終わります。映画の最後に森さんが、「これが戦争なのだ。戦争は絶対にしてはいけないという結論を学びました。今後とも世界が平和であることを祈りましょう」と語るシーンがあります。見終わった後、この言葉が深く響いてきます。全編に流れる音楽、尺八の音も印象深いものでした。

〇上映後のトークショーとQ&A

この作品は、2016年5月のオバマ大統領訪日の前には完成していましたが、大統領と森重昭氏の抱擁シーンの写真が世界中に配信され、大きな反響を呼んだことから、映画の編集をし直したこと、英語がそれ程堪能ではない森さんがホワイトハウスに直訴の手紙を送ったり、電話帖から苗字が合致する人に片っ端から電話をしたりして、遺族を探し当てる努力がいかに大変だったかが分かるエピソードが紹介されました。

QAでは、「グリーリーさんがこの映画から得た物は?」という会場からの質問に対して、「自分は大した事はできないと思っている多くの人に対し、“普通のひとでも、信念をもって努力をし続けることで、大きな仕事をなしえる”ということを、森さんが証明してくれたこと」と話されました。正にその通りだと思いました。

〇終わりに

上映会終了後、多くの方々から「素晴らしい映画だった」との感想をいただきました。若い方の中には「涙が止まらなかった」という感想を述べた方もいらっしゃいました。

あらためて映画の持つ力に感銘を受けました。心配したお天気も、どうやら雨にはならず、予想を上回る200名近くの方に足を運んでいただきました。皆様に心から感謝いたします。

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