ジャパンボウル入賞者の日本研修旅行に協力(3)

3)  歌舞伎座見学と歌舞伎鑑賞

レベル4(最上位クラス)の優勝チーム、カリフォルニア州モンタビスタ高校の3名は、Mazda Foundation の支援により、東京での滞在が数日延長されました。彼らは事前に東京で行ってみたい場所を選び、立教大学の学生さん達が案内役としてサポートし、東京見学を楽しみました。JBSGとしては、この期間に是非見学してもらいたい場所として歌舞伎座見学を提案し、歌舞伎座のご厚意を得てそれが実現しました。

歌舞伎座は、これまでに数多くの海外公演をしており、2007年にはワシントンDCの日米協会創立50周年記念事業として平成中村座が出演していることもあり、ジャパンボウルへの理解も深く、アメリカの高校生の見学に最大限の協力をして下さいました。普通では入れない、歌舞伎座の舞台裏、奈落見学や、楽屋訪問が許され、付き添いとして参加した我々も大変貴重な経験をさせていただきました。

舞台裏見学

8月12日(金曜日)、この日は丁度8月納涼歌舞伎で、出し物は三部構成になっています。我々一行は、第二部を観劇しました。そして第一部と第二部の幕間の時間に、舞台裏見学が許されました。初めて見る舞台裏、新装となった歌舞伎座の舞台裏は、想像をはるかに超えた広さと収納されている大道具、小道具の大きさに圧倒されました。圧巻は回転する舞台中央の奈落、装置や機材が並び、仕掛けの大きさと幕間の時間に大車輪で仕事をされている大勢の裏方の方々の心意気が素直に伝わってきて、一つの舞台を作り上げる大きな力を目の当たりに見ることができました。

楽屋見学

その後、坂東彌十郎さんの楽屋を見学させていただきました。ジャパンボウル優勝の高校生3名に付き添いが11名、14名の人間がゾロゾロと楽屋を訪問したので、彌十郎さんもさぞ驚かれたのではないかと思います。しかも、息子さんの坂東慎吾さん共々第二部にご出演になる大変忙しい時間にもかかわらず、にこやかに迎え入れて下さり、頭が下がりました。高校生には、歌舞伎の概要や、これから観劇する「納涼歌舞伎」が、古典歌舞伎とは一味違う「陽気でテンポのある新しい歌舞伎」であること、アメリカ公演の時の様子なども熱心にお話ししていただきました。高校生のみならず、付き添いの我々もすっかり魅了され、記念撮影をせがんで、少々はしゃいでしまいました。

歌舞伎観劇

3階席から見る舞台

八月納涼歌舞伎第二部の出し物は、「東海道中膝栗毛」と「艶紅曙拙(いろもみじつぎきのふつつか)」でした。

「東海道中膝栗毛」は、弥次郎兵衛(染五郎)と喜多八(猿之助)のお伊勢参りの道中記ですが、東海道から、なんとラスベガスまで飛んで行く、奇想天外の珍道中となり、あっという間にラスベガスの華やかなショーの中に放り込まれた2人の慌てぶりや、歌舞伎役者の演じるラインダンス、派手な音楽、きらびやかな舞台演出に圧倒されてしまいました。これが歌舞伎?と驚きながらもテンポの良さと、役者さん達の芸達者ぶりに引き込まれ、最後の宙乗りに拍手喝采して大いに盛り上がりました。そう、これが歌舞伎、まさに「かぶ(傾)く」なのだと納得し、いつの時代でも「かぶく」に挑戦している歌舞伎の一面が垣間見られました。

「艶紅曙拙」は、富士山の山開きで賑わう江戸の浅草が舞台で、江戸商人の様々な姿を披露する舞踊です。暑い夏に涼を売る商人達が登場し、江戸の風俗や慣習を伝えてくれる作品でした。数日前に私達が主催した交流会で、稀音家六綾先生から歌舞伎と長唄の関係を説明していただき、三味線と長唄の演奏を聴いたばかりの高校生達は、「これだ、これだ」と喜んでくれました。タイミングの良いことに、舞台には蝶々売り、朝顔売り、虫売りに加え、団扇売りも登場したので、先日手作りをした団扇が、江戸時代の風物としても理解してもらえたと思います。

こうして歌舞伎座見学と歌舞伎観劇は無事終了しました。歌舞伎の価値や芸術性がどれだけ伝えられたかは分かりませんが、日本の伝統芸能である歌舞伎を直に鑑賞し、舞台裏を見学し、役者さんとお話しをする機会を持てたことは、強い印象を残したと思います。

ここに、改めて歌舞伎座と坂東彌十郎さんをはじめ多くの方々のご厚意に深く御礼申し上げます。